竹中ギー太の忍法帖

ノンポリギター弾きの日々異常無し日記

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パット・メセニー ブラジル3部作 スムースジャズの革命

1990年代のジャズ界を席巻したパット・メセニー・グループが今回のお題です。

 


Pat Metheny Group Live In Japan 1995

 

 

目次

 

1、パットメセニーグループ 

 

パット・メセニー・グループは1978年、ギタリストのパット・メセニーとキーボードプレイヤーのライル・メイズを中心に結成されました。

 

その作品は

 

1、パット・メセニー・グループ  1978年

2、アメリカン・ガレージ     1980年

3、オフランプ          1982年

4、トラベルズ          1983年

5、ファース・トサークル     1984年

6、コードネームはファルコン   1985年

7、スティル・ライフ       1987年

8、レター・フロム・ホーム    1989年

9、ザ・ロード・トゥ・ユー    1993年

10、ウィ・リヴ・ヒア      1995年

11、カルテット         1996年

12、イマジナリー・デイ     1997年

13、スピーキング・オブ・ナウ  2002年

14、ザ・ウェイ・アップ     2005年

 

以上14作品。

4、トラベルズ と 9、ザ・ロード・トゥ・ユーはライブ盤、6、コードネームはファルコンは映画のサウンドトラックです。

 

それを除いても11作の濃密な作品群ですので、今回は、5、7、8 の通称ブラジル3部作に絞りたいと思います。

 

2、スムースジャズとは 

 

まず、スムースジャズの革命と言うタイトルですが、メセニーが聞いたら「〇ニー〇」と一緒にするなとか言いそうですね。

そうは言ってもジャンルは同じなのです。

ジョンレノンがベイシティローラーズと一緒にするなと言っても詮無いことです。

 

スムースジャズは70年代後半以降、ジャズのメインストリームになったジャンルです。

ジャズロック、クロスオーバー、フュージョンとも微妙に違います。

言ってしまえば、「cafe jazz」です。

 

時代は、キャバレーやスナックから昼下がりのカフェへと変わっていた頃です。

現代ではそれほどおしゃれでもないコンビニやスーパーやラウンジやスポーツジムでも流れている音楽の一つになりました。

スムースジャズは喫茶店やレストランのバックグランドミュージックに最適です。

録音された音楽ソースがビジネスになった最後のジャズですね。

 

その流れはチャーリーパーカーのストリングスセッションから、ウェスモンゴメリーなどのCTIレーベル、そして決定的な名作はジョージ・ベンソンのブリージンです。

スムースジャズという呼び名は80年代末期のアメリカのラジオ局から発生したようですが、イージーリスニング・ジャズとかポップ・ジャズとか呼ばれるよりはマシでしょう。

 

本題から外れましたが、スムースジャズに関しては近いうちに特集します。

 

 3、ブラジル3部作について

 

パット・メセニー・グループの通称ブラジル3部作は「最も完成度の高いスムースジャズ」というこれ以上ない褒め言葉を与えたいです。

 

だって喫茶店でかかってたら、他のどんな曲よりも幸せを感じるじゃないですか。

 

 

4、第5作目「ファースト・サークル」

 

ジャズとしては大ヒットを記録しながら評価がいまいちだった「アメリカンガレージ」に近い印象の作品ですが、ひねり方が凄いです。

当時はLPレコードでA面の曲の流れを今でも思い出します。

 

出来ればこれを続けて聞いて欲しいです。

 

1、Forward March

2、Yolanda,You Leam

3、The First Circle

4、If I Could

 

録音された音楽を聴くと言うことでこれほど壮大な経験は、ベートーベンの第九レベルだと思います。

それ以上かもしれない。

 

パット・メセニーのピッキングフォームは独特で、本人は後進のギタリストにお勧めしていないのですが、通称「三本指ホールド」といいます。

もしも、お店にハードピックしか売っていなかったとして、ジャズの四つ刻み専門のギター奏法であればピックを上に向けて弦をなでるようなフォームにならざるを得ません。

これを「モータウン系逆アングル」(ジミヘンなど)と呼びます。

同様にカントリー系のジャカジャカギターの場合は、上も下もなでるフォームになります。

これが三本指ホールドです。

 

タイトル曲「ファーストサークル」を聴いてください。

必殺のジャカジャカコード弾きに燃えに燃えまくっています。

 


ファースト・サークル

5、第7作目「スティルライフ」

 

ここまでLP時代です。

3部作では最もブラジル的なサウンドの作品でcafe jazz にふさわしいエレガントな作品が並びます。

前作のA面の構築美を全体で表したような、さらなる力作の誕生でした。

 

特筆すべきはパットメセニー奏法の完成でしょう。

現在まで変わらぬ非常に高度な理論に乗っ取ったオリジナリティあふれる新時代ギター奏法が全体をけん引しています。

芸術性という点ではこれ以前も同様に高レベルですが、再現性のあるポストビバップの一手法の完成と言う革命がここにはあります。

 

Minuanoではターゲッティング理論に基づいた幽玄なラインで魂を揺さぶり、Third Wind ではパットマルティーノを意識し、さらなる高みを目指したドライビングジャズギターソロを聞かせます。

タイトルもブラジルを意識したのでしょう。

3部作の中核の傑作アルバムですね。

 


スティル・ライフ

6、第8作目「レター・フロム・ホーム」

 

1989年ということで完全にCD時代に入り、61分以上の作品になりました。

 

クラシック指揮者のカラヤンがどうしても第九を一枚に入れたいと言うことでCDの収録時間は70分以上と言うことになり、ポップ系のミュージシャンに混乱が見られたころです。

70分だとLP時代の2枚組と同時間ですから、毎回そんな作品を造るのは相当な慣れが必要です。

 

この作品もやや長いかなと思わせる部分もあります。

当時はアルバムを買ったら一回ごとに最後まで聞くのが普通でした。

 

ただ、一曲一曲の出来は非常に優れていて、流れと言うよりは一曲聴いて満足と言うタイプです。

未来派志向のメセニーですから、CDになればアルバム志向ではなくなると予測していたんでしょうね。

 

(しかし、メセニーグループ最終作の「ザ・ウェイ・アップ」はアルバム志向の大傑作ですが。)

 

一曲目の Have You Heard はマイナーブルースの進行に乗ってメセニーのターゲッティングノート奏法が炸裂します。

当時のライブでも最大の見せ場となり、ジャズギターの歴史を変える大熱演です。

 

全体的にメセニーやライルメイズのアドリブソロが生きる曲を並べたようで、インプロ色の強いスムースジャズ作品になっています。

 

グラミー賞ではベストフュージョン作、ビルボードではコンテンポラリージャズ1位とジャンルが混乱していますが、すべて最高評価です。

 


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7、まとめ

 

このブラジル3部作はジャズ120年の歴史でも10指に数えられる歴史的録音であると評価したいです。

 

そして、新たに誕生したスムースジャズと言うジャンルは日本ではまだ受け入れられていない状況ですが、録音作品としては70年以降最も高レベルな作品を残していますし、今一度評価のチャンスがあってもいいと思いました。

 

ジャンル名が出来た時点ですでに名作は出そろっていたと言う珍しいジャンルですが。

 

スムースジャズがレベルの高いジャンルとして現在も存在し続ける最大の功労者は、パット・メセニーとライル・メイズのコンビで間違いないですね。